09.終幕 


 ―――ジャムカ王子が寝返ったらしいぜ。

 牢番の兵士達が、そんな会話を交わしている。ザハは座り込んでそれらを聞いていた。まだ体力が回復しておらず、ろくに動けないのである。
「寝返った‥‥‥。あいつ、まだ生きてるのか。」
 小さな声で呟く。近くの兵士―――見張りには聞こえなかったらしい。
 
 奴がまだ生きてるなら‥‥‥今は、眠ろう。

 彼は、牢にいた。


「食事です。」
 日が沈み、兵士の一人がそう言って皿を運んで来る。
 すぐにその兵士は鍵束を取り出した。何しろ古い牢なので、食事を渡すための小扉などはついていない。差し入れの時は、いちいち扉を開けなければならないのである。
 扉が開き、兵士が食事を持って中に入ってくる。扉の正面には見張り役が立ちふさがっている様だ。
 しかし、ザハを良く知っているはずの兵士達でさえ、その行動は明らかに用心が足りなかっただろう。
「‥‥‥下っ端の兵士の一人や二人じゃ、役不足だよなぁ?」

 ザハの呟きに見張りが振り向こうとした時、既に、中に入ってきた兵士は打ち倒されていた。彼が見聞きしたものは、、鈍い音と、同僚がその場に崩れ落ちる姿だった。

「なっ‥‥」
 慌てて、見張り役の兵士が腰の剣を抜こうとした。しかし、その剣を抜き切らないうちに、ザハは先に気絶させた男の落とした短剣を素早く拾い上げ、柄で思いきり殴り付けた。
 兵士が、その場に倒れる。


「どうにか動ける様になってて良かったぜ‥‥‥明日になったら問答無用で殺されてたかな。」
 短剣を簡単に携えると、服についた埃をはらい、兵士の持っていた鍵をとりあげ、気付かれた時の為に二人を牢に閉じ込めておく。折角なので、差し入れられた食事の一部は頂く事にした。
 やがて簡単に身支度を整えると、牢の入り口に向かって歩き出した。

 ジャムカに陛下の事を知らせなきゃ、な‥‥‥。


「‥‥‥俺に、客だって?」
 シグルド達と作戦会議に加わっていたジャムカは、駆け込んで来た兵士に告げられ、怪訝な顔で案内され歩いていった。今の彼に、わざわざ会いに来るようなものがいただろうか?
 万が一に備え、ナイフをすぐに取り出せる様にしておく。

 歩いて言った先に居たのは、彼が留守を任せていたはずの友人だった。


「ザハ‥‥‥何故お前がここにいる‥‥‥?」

 ジャムカの声には、隠し様もない程の動揺の色が滲んでいた。ザハはそれを感じているのか、すぐには答えなかった。
「親父はどうした!?留守はお前に任せたはずだ!」
 普段の彼ならほとんどする事のないような激しい剣幕で問い詰める。ザハは黙ってそれを受けていた。後からやって来たシグルド達が、驚いたように立ち尽くす。
 やがて、ジャムカの声は、すがる様な響きに変わっていく。
「何故‥‥‥城で父を守っているはずのお前が、ここにいる‥‥‥‥?」
 ‥‥‥ジャムカの問いに、やがてザハが低い声で答えた。
 普段の彼が持っている陽気さは、その言葉にはこもっていない。
「陛下は‥‥‥サンディマの手にかかった。奴は、闇魔道士だ。」
 ジャムカは絶句した。

「陛下がお前に言われた和平の件を口にした途端、奴は正体を現した。城を、乗っ取りやがった‥‥‥。切り倒そうとしたが、魔法でやられた。俺はどうにか致命傷は負わずに済んだが、陛下は‥‥‥‥」


 言葉を失った友の顔を一瞥すると、すぐに顔を背ける様に俯く。やがて、唸る様に言った。

「すまない、ジャムカ‥‥‥。」


 ザハの運んで来た情報によって、シグルド達は作戦の建て直しを計らなくてはならなくなった。暗黒魔法には強力なものが多いため、その対抗策が必要になったのだ。

「ダークマージの魔法は強力だ。遠距離魔法を使う者もいるらしいしな。確信はもてないが、万が一の時はひどい犠牲が出る事になる。」
 キュアンが言った。シグルドがそれを受けて考え込んでいると、鈴を鳴らしたような声が部屋の中に響いた。
「私なら‥‥‥その魔法、封じられるかもしれません。」

「ディアドラ?」
 シグルドが振り向いた先に居たのは、紫水晶のような輝きを持った銀髪の、どこか神秘的な雰囲気をもった17、8の少女だった。


 それは、エーディンがマ−ファ城の城下町で会った少女だった。
 ディアドラはシグルド達がマ−ファ城についた時にシグルドと出会い、その時はすぐに別れたものの、精霊の森の入り口で再会を果たし、軍への同行を申し出たのだった。
 ディアドラは森の隠れ里から出る事を禁忌とされ、人と交わるのを出来る限り避けていたという。しかし、彼女とシグルドが惹かれ合っている事は誰の目にも明らかだった。
 彼女は、精霊の森を出る道を選んだ。

「どういう事だ?」
 ジャムカが訪ねると、ディアドラは一振りの美しい杖をかざしてみせた。
 杖の身には精緻な細工が施され、先端に取り付けられた宝玉が、赤とも青とも、また別の色ともつかない不思議な輝きを放って、その場に居た者全ての目を惹いた。

「これは、サイレスの杖と言います。この杖には、人間の魔力を封じる力があります。使い手の魔力にもよりますが‥‥‥これを使えば、そのダークマージの暗黒魔法を封じ込める事ができるかもしれません。」
 そうディアドラが語りおえると、シグルドが言った。
「‥‥‥どうやら、作戦は決まった様だな。」


 戦闘が始まると、シグルドはまずディアドラの周りを固めるように指示をだした。杖に祈っている間、持ち主は無防備になる。
 周囲で戦いが始まり、ディアドラは呪文を唱え始めた。小さな声で紡がれるその詠唱をうけて、サイレスの杖にはめ込まれた宝玉が淡い輝きを放ち始めた。
 やがて、宝玉の光が眩いばかりになった時、ディアドラは最後の呪文を唱えた。
「‥‥‥―――『サイレス』!」

 宝玉が強い光を生み出す。‥‥‥少し経って、やがて杖は徐々にその光を失いだした。
 シグルドが駆け寄る。ディアドラは恋人に向かって言った。
「成功‥‥した様です。しばらくの間、城にいる魔導士は魔法を使う事が出来ません。シグルド様、今のうちに‥‥‥‥。」
 「わかった」と力強く答え、シグルドは側にいた彼の配下の騎士、アレクにディアドラを安全な場所へ連れて行くように命じた。そして、すぐに城へ向かって馬を走らせ出した。


 ジャムカは振り降ろされる斧を横に避けると、つがえた矢を放った。向かってきたアクスファイターが、その矢を受けて倒れる。
 すると、彼の目の前に、見知った顔が立ちはだかった。
「ジャムカ様‥‥‥」

 ―――かつて、ジャムカに仕えていた男だった。ジャムカよりも多少年下だっただろうか、真面目でよく尽くしてくれていた事を思い出す。
 若者はジャムカの名を呼んだきり黙り込むと、黙って自分の斧を構えた。
 彼の表情には、何の感情も浮かんではいない。サンディマ操られているためにか、それとも彼自身の意志でジャムカに刃をむけているのかは、その顔からは判断出来なかった。

「‥‥‥‥」
 ジャムカは素早く矢をつがえ、放った。


 ザハは後方で無力化した兵士達を助けていたが、戦いが激しくなる内に、彼自身も前線へと赴く様になっていた。ヴェルダン軍の弓兵の一人を見つけると、すばやく駆け寄って、手にしたナイフを一閃する。腕を大きく斬られて、兵士は動けなくなった。

 やがて、彼の視界の端で、一人のボウファイターがヴェルダン兵の若者を射抜いたのを認めた。

 ボウファイターが友人だと気付き、思わず、小さく呟く。
「‥‥‥自分で気付かない内に、躊躇うのか。」
 ジャムカの動きは、ザハの知るそれではなかった。敏捷な彼は、ザハの知る限りでも一番の早撃ちである。だが、些か動きが鈍い、というよりは明らかに戸惑っている様子だった。
 相手がよく知った顔―――例えば、彼の部下―――だったのだろうか。一矢を放ったものの、すぐには次の矢を撃てないでいるらしい。

 ‥‥‥内心で何考えたとしても、人前じゃほとんど無表情のまんまだからわかりにくいんだよな‥‥‥

 それだから「死神」なんて呼ばれるんだ、と内心悪態をつきながら、ザハは主の元へと駆け寄った。ジャムカの背後から襲って来た兵士を、彼の剣が斬り払った。物音に振り返ったジャムカに向かって、ザハは大声で怒鳴った。

「‥‥‥馬鹿野郎。お前の相手は、こんな奴等じゃないだろうが!さっさと行け、城だ!」
 小さな衝撃でも受けた様にジャムカが彼の顔を見返し、やがて走り出した。

 いつの間にか、城門は目の前だった。


「シグルド公子!」
 ジャムカは城内を歩き回るうちに、見知った顔を見つけて声をかけた。青年がこちらを振り向く。
「ジャムカ。今、例の魔導士を探させているが‥‥‥魔法を封じられたから、どうも身を隠している様だな。」
 言って、辺りを見回した。それを聞くと、ジャムカは城の奥へと歩き出した。シグルドが何処へ?と訪ねると、振り返って答えた。
「‥‥‥父の部屋だ。」


 バトゥは、まだ息があった。

 瀕死の状態におかれ、放置されたままであったのだろうか、既に衰弱しきっていた。その姿からすると、むしろジャムカ達が到着するまでもっていたのが奇跡だったのだとすら思える。目をうっすらと開けると、自らが横たわっている寝台の側で、必死に自分に呼び掛ける青年の姿を認め、口を開いた。
「ジャムカか‥‥‥?無事だったのか‥‥‥。」
 声を出すのさえ辛いと言った風だった。ジャムカは「喋らないで下さい」と何度も繰り返したが、バトゥは口を閉じようとはしない。
 ジャムカの制止に構わず、これだけは伝えなければと、シグルドの方を向いた。
「シグルド殿、よく聞きなさい‥‥‥」
 バトゥが語り出したのは、自らを陥れた魔道士の企みと、暗黒神ロプトウスについての事だった。
「何かを企み‥‥儂や息子達をそそのかして‥‥‥動乱を起こした‥‥‥‥。彼奴一人ではないだろう‥暗黒教団は‥‥‥ロプトウスを復活させようとしている‥‥。」
 話を終え、どうかお気をつけなさい、と言うと、やがて大きく息をついた。

「少し‥‥‥席を外して下さいますかな‥‥‥‥?」



 シグルドが退室したのを見届けると、バトゥはゆっくりと語り始めた。
「すまなかった、ジャムカ‥‥‥。儂は、弱かったのだ‥‥‥。」

「‥‥‥‥どうして、あんな言葉を信じてしまったのだろう‥‥‥。グランベルが攻めてくるなど‥‥‥否。」
 言って、自嘲気味な、弱々しい笑みを浮かべる。
「‥‥‥真実でないとわかっていたとしても、同じ事か。『攻めてくるかもしれない』と‥‥‥それだけで‥‥‥同じ事をしたのだろうな。‥‥‥儂も、疲れていたのか‥‥‥。」

「父上?一体、何を‥‥‥‥」
 呟いてから、突然、ジャムカは自分の中にあった疑惑が解けたのを感じた。この動乱が始まってからと言うもの、今まで絶える事なく彼に不審を抱かせ続けた事実。
 何故温厚なこの老人が、自ら結んだ和平を破り、他国を侵略する様な愚行を犯したのか。
 悪寒すら覚える薄笑いを頭巾の中に隠された顔に張り付かせ、自分達を眺めやっていた一人の闇魔道士の姿が思い浮かぶ。


 ある日、突然に姿を現した男。彼の見せた魔力は、魔法というものからは縁遠い人々を驚かせ、ジャムカでさえも彼の不吉さを危惧しながらその力に驚いたものだった。
 自然を崇め、目に見えて自分達よりもより大きい力に対して畏敬の念を抱いてきた、ヴェルダンの民。バトゥやジャムカとて、その例外ではない。その若さ故の精神的な強さが幸いしたジャムカとは違い、魔道士に不審を抱かなかった老王は、彼を側に置く事にした。
 そんな魔道士が、こんな言葉を口にした時、バトゥは一体どう感じただろうか?
『私は旅を続けるうちに知ったのです。グランベルは、いずれこの地へと攻めてくるでしょう。軍の中核をなす部隊が居ない今の内に何らかの手を打たなければ、ヴェルダンは彼の国の属国となってしまうでしょう』

 ‥‥‥今思えば、傀儡にするのはさぞかし容易な事であったに違いない。

 先見の明に欠けていたといえばそうかもしれない。
 王でありながら、人を見る目を持たないと責められても仕方が無い。
 ‥‥‥だが、年老い、頼りにしていた長男を失ってもなお、彼は確かに自分の国とその民を支え続けていたのだ。
 決して、長い確執が完全に解けた訳では無い、強大な軍事力を持つ隣国を、バトゥは恐れていた。だからこそ、争いを避け、和平を結んでいた。それは、確かな信頼関係に結びつく事はなかった。
 そして、恐れたからこそ、サンディマの言葉を退ける事が出来なかった‥‥‥。


「‥‥‥なんで気付かなかったんだ‥‥。なんで、もっと早く奴を追い出すか、殺すかしなかったんだ‥‥‥。なんで‥‥‥」


 悔やむ様な、泣きそうな顔でジャムカが罵っているのが、他ならぬ彼自身である事を悟って、バトゥは弱々しく微笑んだ。
 自分の弱い心を、この青年は「支えてやる事が出来なかった」と、そう悔やんでくれているのだろう。持ち前の責任感からだろうか、何か間違いが起きた時に、自分自身の逃げ道を全て断ち切ってしまう様なジャムカの癖を、バトゥは昔からよく知っていた。
 ‥‥‥つくづく、無器用な奴だ。そう、思う。

「すまぬな‥‥‥」
 死の床にある義父から悲しさと愛情をないまぜた視線をむけられて、堪えきれず、ジャムカが懇願する。
「喋らないでくれ‥‥‥じいさま、頼むから‥‥‥」

 ‥‥‥全くの無意識のうちに、ジャムカの口調は崩れ、養父を呼ぶそれは、かつてバトゥが「父」でなく「祖父」であった頃の呼び方に戻っていた。
 どちらも、彼が父を亡くして以来、久しくバトゥのかけられた事のないものだった。おそらく、普段は意識して口調を変える様にしていたのだろう。

 懐かしい気持ちが込み上げて、バトゥはもう一度微笑んだ。
「‥‥‥‥辛い思いをさせてばかりだが‥‥‥‥後の事は、頼む。」
 弱々しく言い終え、再び大きく息をつくと、目を閉じる。

「‥‥‥じいさま?」
 返事は、無い。



「ジャムカ‥‥‥バトゥ殿は?」
 シグルドの問いに、部屋から出て来たジャムカは、しかしそれには答えずに、無言でその場を去って行った。


 少しして、続々と後方に居た者が追い付いて来る。シグルドはエーディンの姿を見つけると、今まで受けた多少の手傷の治療を頼んだ。
 ‥‥‥やがてそれが済んだ頃、部屋に飛び込んできた人物がいた。
「シグルド様!」
 慌てて主の名を呼んだのは、シグルド配下の騎士の一人、ノイッシュである。シグルドが何事かと訪ねた。
「例の魔導士‥‥‥サンディマが見つかりました!」

 ノイッシュに誘導されシグルドが駆け付けた先には、不敵な笑みを浮かべる魔導士がいた。その視線の先には‥‥‥
「キュアン!」
 重傷を受けているキュアンの側、妻のエスリンが必死にライブをかけている。どうやら既に一戦交えた後のようだ。慌てて追い掛けて来たエーディンが、その治療に加わる。
 サンディマは新たに現れた敵に向かって言った。
「生憎だが‥‥‥既に魔封じは解けているよ」
 シグルドとノイッシュが、相手を睨みながらそれぞれ剣を構える。しかし、二人が一足飛びで斬り掛かるには、それは広すぎる間合いだった。サンディマが呪文を唱え始める。
 二人が思わず身構えた、その時。
 
「っ‥‥‥」
 突然大きく目を見開いたかと思うと、声になりきらない悲鳴を上げた。そのまま、その場に膝をつく。
「‥‥‥貴様‥っ‥‥」
 凄まじい形相で、突然矢を突き立てられた自分の背中の向こう側に、それを放った相手の姿を認める。 サンディマが再び何か言おうとした時、背後の人物は、携えていたナイフを抜き放って素早く駆け寄り、右腕を一閃させた。

 ‥‥‥彼の動きには、微塵の躊躇いもなかった。
 鮮血が宙を舞い、サンディマが倒れる。

 闇色の魔道士は、二度と動く事はなかった。

 

 シグルドは一息つくと、魔導士を切り倒した相手―――ジャムカに「助かったよ」と声をかけようとして、言葉を失った。

 ‥‥‥ここにいるのは、誰だ?
 シグルドの頭に浮かんだのは、そんな事だった。



 返り血を浴びている戦士など、珍しくもない筈だった。シグルド本人のその姿も、ほとんど大差はない。
 しかし、目の前に立っている青年―――サンディマを切り捨てた時の、その鮮血で身体を染めた褐色の髪の青年の姿は、シグルドに別人の様に思わせ、思わず声をかける事を躊躇わせる「何か」があった。
 悪寒すら覚える‥‥‥普段の彼からは感じられない、「何か」。

 ―――寒気がする程の鬼気と、深い嘆きの色‥‥‥。


 キュアン達も言葉を失っている様だった。エーディンも黙ってその様子を見つめていたが、彼女の頭の中には一つの言葉が浮かび上がっていた。
 今、目の前にいる青年のもう一つの名前。

 『魔弾の射手』‥‥‥。

 感情をたたえないその顔からは、何故か悲しみだけがはっきりと伝わって来た。



 不意に、ジャムカがシグルドの前に進みでた。立ち止まり、膝をついて、頭を垂れる。困惑しきったシグルドを前に、彼は低い声で言った。
「‥‥‥あの男が、この戦の元凶だ。父を唆し、陥れた‥‥‥奴の死をもって、我が父の罪‥‥‥お赦し頂きたい。」


「‥‥‥あ‥‥。」
 シグルドはとっさに答える事が出来なかった。静まり返っている中、ジャムカは歩き出し、彼のすぐ横を通りすぎようとした。
「‥‥‥後始末は俺達が引き受ける。あなたは‥‥‥グランベル本国に連絡を。」
 すれ違い様にそれだけを言うと、そのまま立ち止まる事なく、何処かへ歩いて行った。

 やがて、一人の青年が姿を現す。確か、ザハと言う名だったはずだ‥‥‥。麻痺していた様なシグルドの頭に、青年の名が浮かんだ。
 ザハが口を開いた。
「何か、お尋ねになりたい事がございましたらお申し付け下さい。城内の整備や、この後の諸々の処理は私が引き受けます。」


「ジャムカを‥‥‥彼を、休ませてやって下さい。」


 
 
 

Continued.



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